「飛ぶ男」安倍工房
「飛ぶ男」安倍工房著 読みました。
文庫本、手に取りやすい薄さです。

飛ぶ男
題名通り、まず飛ぶ男が出現します。
それもマントをつけてスーパーマンのように飛ぶのではなく、直立で浮いて水平方向にゆっくり移動するような飛び方。地味です。
飛ぶ男は電話中で、相手は腹違いの兄。兄のマンション近くに浮いているわけです。
最初、弟だと名乗る急な電話に戸惑う兄ですが、電話中、なんと飛ぶ男は兄の隣の部屋の住人の女性に空気銃で狙撃されます。
傷ついた飛ぶ男は、兄の部屋に逃げ込みます。
そこへ、狙撃した隣の女性も飛ぶ男を探して部屋を訪れてくる…。そして、という話です。
飛ぶ男、奇想天外な設定でありながら、人物ややり取りの描写がとてもリアルなため、読んでいるうちに、ファンタジーではなくドラマとして読んでいる。さすが、安倍工房ですよね。
ところがこの話、実は未完なんです。
なんでも安倍工房の死後、見つかったものだとか。なので短い。
完成していたら、この話どのように展開し、着地したのでしょう。気になりますね。
同じ本にもうひと作品含まれてます。
「様々な父」
2つの不思議な薬を父親が息子に差し出します。一つは飛ぶ薬、もう一つは透明になる薬。どちらがどっちなのかは飲んでみないと分からない。父親は息子にどちらか選べと迫ります。そして残った薬を父親は飲みます。すると体が見えなくなる。どうやら父親の薬は透明になる方だったようです。ということは息子が選んだ方は飛ぶ薬だったようです。
そう、この「様々な父」に続く話が「飛ぶ男」のようです。様々な父を読むと、飛ぶ男がなぜ兄の元にやってきたのか分かるのです。
安倍工房といえば、「砂の女」や「箱男」。現実にありそうでない変わった設定でありながら、なぜかリアルで引き込まれてしまう。この人の作品の特徴でしょうか。
何が言いたいのだろうと、考えると難しい。でも、深い意味は理解できなくても感覚的に楽しめてしまう。
安倍工房はかつてノーベル文学賞の候補にもあがっていたのだとか。受賞は叶わなかったものの日本が世界に誇れる小説家であることは間違いないですよね。
どちらの話も短編で読みやすいです。
安倍工房の世界を楽しみたい人は是非。