ほんのみのむし!

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「夜明けのはざま」 町田そのこ:著 読みました!

読書記録1っ発目。

町田そのこさんの「夜明けのはざま」読みました。

町田そのこさんの作品は何作か読んだことがありますが、どれも共感の嵐!

厳しいけれど優しい。とても好きな作家さんです。

 

今回は、短編集「夜明けのはざま」です。

短編集といっても ばらばらの話が集まっているわけではなくて、

家族葬を営む「芥子実庵」という葬儀屋が舞台でそこに関わる人々の話です。

葬儀屋ですから、当たり前のことだけれども人の死が扱われています。

が、悲しいとか寂しいとかではないんですよね。

舞台は葬儀屋だけれどもそこに生きる人々の話です。

 

感想を簡単に言うと 

もう共感。途中泣けてくる。じっくりと読めるとても素敵な本でした。

 

ということでネタばれしすぎない程度に少しばかりあらすじを…。

 

~あらすじ~

佐久間は芥子実庵につとめる20代の女性だ。若い女性が葬儀屋で働くということに家族や恋人はいい顔をしない。だが本人は葬儀屋の仕事にやりがいを感じていた。そんな彼女の元に仕事が舞い込む。それは親友なつめの葬式だった。なつめは自殺し、自分の葬式を佐久間に自ら託したのだ。佐久間は迷っていたがなつめの死に顔を見て決意する

ふがいない夫と別れて奮闘するシングルマザー。一人娘からは頑張っているにも関わらず心無い言葉までかけられる。そんな彼女に元夫の恋人の葬式を取り仕切ってほしいと死んだ元夫の恋人から託される。

 

須田はある後ろ向きな理由から芥子実庵で働いていた。ある日、芥子実庵に須田の昔の知り合いの男が父親の葬儀を依頼してきた。須田は昔、その男に壮絶ないじめを受けて傷ついていたが…。

 

こんな感じで短編が続きます。

2つめのシングルマザーの話には共感しかない。

そして生意気な娘が母親をかばい解き放つ言葉!もうね~涙が出ます。

母親が報われた瞬間。

そんなふうに娘に言われたらどんな苦労も悩みも吹き飛びますよ、そりゃあ。

 

人の死が扱われることで暗かったり辛かったりする小説と思われがちですが、

もちろん辛さはありますが、それだけではない人の温かさが描かれている。

葬儀屋芥子庵の雰囲気がまたとても素敵なのです。

 

作中には偏見に凝り固まった人々も出てきてきついなと感じると同時に、

強めに描かれてはいるけれど実際にもいるよなと妙に納得してしまう。

また、過去につらい目にあったり生きづらさを感じている人々がたくさん

描かれている。これはねじまがってもしょうがないよなというような。

 

自分のつらさや生きづらさを人のせいにして恨んで生きているのはそれで仕方のないことだと思います。

それだけつらい目にあったのだから…。

けれど町田そのこさんはそこに試練を与える。

過去の出来事と向き合いなさい、自分の至らなさを受け入れなさいと。

それができたときはじめて前を向けるのだというメッセージを受け取れる作品です。

 

ぜひ読んでみてください。