「キネマの神様」読みました。
人におすすめされて読んだのですが、読んで良かったと思える小説です。
タイトルで分かるかと思いますが、映画を愛する人々の話です。
あらすじ〜簡単に。
映画とギャンブルを愛する父が心臓病で入院した。娘の歩はちょうどその頃、仕事を辞めた。そこは父が自慢するほど大きな会社で、シネコンのプロジェクトを任されるほどの立場だったのだ。
一方では、父の借金が発覚する。今までもあったことで、歩と母がいつも肩代わりし、父を甘やかしてきたのだ。だか、今回はギャンブル依存症を克服させるべく、歩は父のもう一つ好きなもの、映画に気持ちをむかせようとする。
そんな時、父は慣れないパソコンと格闘し映画に対する思いを綴った歩の言葉を投稿する。それが元で歩はある映画雑誌の会社から声をかけられる。そこは昔でこそ本格的な映画の雑誌として映画愛好者の間では認められていたが、今では売り上げが落ち傾きかけていた。
父は父でやはり映画に関する文章がある人物の目に留まったことがきっかけで、サイトを立ち上げる話になる。歩の務める会社の同僚らも協力して父のサイトが立ち上がる。サイト名は「キネマの神様」。サイトは順調な滑り出しを見せる。そんなある日、そのサイトに驚くべき投稿が…。
また、父が慣れ親しんだ親友の営む名画座は、入館者数が少なく細々と営業していたが、近くにシネコンができることで館長は閉業することを覚悟する。その原因であるシネコンはかつて歩が進めていたプロジェクトだったー。責任を感じた歩はなんとか名画座を潰さなくて済むよう奔走するが…。
小さな映画雑誌社、シネコンにおされ潰れそうな名画座、それらに関わる映画を愛する人々。ギャンブル中毒でちょっと情けないけど味のある父。雰囲気のとてもよい小説だ。
父のサイトはどうなるのか? 潰れそうな出版社や名画座はどうなるのか?
読み終わった時、名画座でニューシネマパラダイスをじっくりと見たくなる、そんな爽やかで温かい小説です。