本のみの虫!

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テスカトリポカ

テスカトリポカ」 佐藤究

 

本の分厚さと毒のある表紙。なんとなく手に取りづらい雰囲気が感じられる本です。

が、結論から言うと読み応えがあり面白かった。そして内容の過激さに結構ドン引きします。

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簡単に行ってしまえば「裏社会」の話です。

麻薬カルテルが支配するメキシコの町から始まります。クレイジージャーニーの丸山ゴンザレスの世界そのものです。そんな街でも普通の住人が暮らしています。が、一旦カルテルに目をつけられてしまうと問答無用の残酷な死が待ち受けます。兄をカルテルに惨殺され、それを機に一人の女性が日本に逃れてきますが、結局後ろ盾もないことから水商売に入り、やくざと関わりをもち、やくざとの間に一人の混血児を生みます。彼が作中の重要人物コシモ。巨大な体と力を持っていたがために周囲から浮きまくり、結局彼も裏社会に関わらざるをえない状況となっていくわけです。決して悪い人物ではないのに。

生育環境の悪さ、後ろ盾のなさゆえのこと。その2つで人間って落ちていくのだなと思うとなんか切なくなりますね。

そしてメキシコ麻薬カルテルで財を成していた一家4人兄弟の一人パレルモは他のカルテルから逃れるようにジャカルタへ。そこで一人の日本人と会い、彼からある仕事を持ち掛けられます。そしてパレルモはその日本人と仕事のために日本へ。その日本で彼らが始める仕事はなんと子供たちの臓器密売。

そのパレルモに認められコシモもその仕事の一旦を担うことになっていくのです。

 

麻薬カルテル、臓器密売、日本のやくざ、闇医者・・・裏社会てんこ盛りの作品。

もちろんフィクションですから創作を含んでいるわけですが、似たようなことが世界で現実に行われているのかもしれないと思うとその残酷さにぞっとします。

 

覗いてはいけない裏の社会を覗きみてしまった感じ。

そして、その社会に巻き込まれていく人たちのきっかけにあるものが麻薬。

つくづく薬物に手を出してはいけないなと。

読み応えありの面白い作品です。