本のみの虫!

読書の記録やおすすめの本などについてつづっていきます。

すごい本「ドグラマグラ」と「胎児の世界」

今回は2冊ご紹介♪

夢野久作の「ドグラマグラ」と三木成夫の「胎児の世界」

f:id:bibriogreen:20240916154829p:image

この2冊、ドグラマグラは小説、胎児の世界は真面目な初心者向け医学関連の新書です。

分野の違うこの2冊。これから説明しますがかなり関連のある2冊です。

 

まず、「ドグラマグラ

夢見る阿呆という意味を持つ著者、夢野久作の代表作ですが、この「ドグラマグラ」は、なんと日本三大奇書の一つとされています。他の二つは小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」と中井英夫の「虚無への供物」。いずれも1930から60年代頃の古い推理小説

ちなみに私は他の2冊は読んだことが残念ながらありません。

このおどろおどろしいタイトルのドグラマグラ、読むと気が狂うという説まであります。でも、多分大丈夫。私、3回読んでます。多分、まだ正気保っています。

 

話のあらすじは簡単に

と言いたいのですが、その前に…

この小説、個人的に話の筋はあまり気にせず、ただ小説の世界に身を委ねて楽しむことを推奨します。この小説は話の筋よりも枝葉の部分と世界観がとても面白い。

だからあまり話の筋を理解することに集中しない方が世界観を楽しめる気がするんです。

 

出だしが秀逸です。

若い人は知らないかもしれませんが、古いねじまき式の柱時計の時刻をつげるボォーんという音がなる前のネジ?が巻かれるジーッという音から始まります。なんのこっちゃって感じですが。

私が幼い頃、祖母の家にこのタイプの柱時計があり、その部屋には大きな仏壇があったのですが、泊まりに行くといつもそこの部屋で寝かされていて、子供ながらになんとなく怖い部屋でした。夜中時刻を告げる音がなるのですが、これまたなんとなく不気味で怖くて、そのためその直前のネジを巻くような音がすると目が覚めたりして。

そんなこともあり、私の場合、この小説の出だしで心持って行かれたのです。

1人の青年はある部屋に閉じ込められている。隣の部屋には彼の妹と思われる女性も閉じ込められており、「お兄さま」と語りかけている。そこは精神病棟の一室で、彼は自分が何者なのかを思い出せない。そんな時、若林という1人の博士に会う。彼はある実験をされており、自分が何者かを思い出すために、正木という教授の書いた論文を読まされる。レトロで耽美的ないかにも大正から昭和な世界にどっぷりと引き込まれていきます。

 

こんな調子で解説していくとかなり長くなってしまうので端折りますが、出てくる登場人物、博士などとっても癖がある。その博士の研究もなんだか怪しさ満点。精神医学とでもいう内容かなとは思うのですが、気狂いと精神病棟を扱った論文「キチガイ地獄」や胎児の精神発達を扱った「胎児の夢」など話の中に出てくるのですが、それがとても面白い。

 

そんなこんなでなんとなく読み進めていけるわけですが…

最初読み終わった時の感想は、

面白かった、でも、なんだかよく分からない、なんだったんだろう今のは。始終話に振り回されていたような、チャカポコチャカポコスチャラカチャカポコ…でした。

読んだ人なら分かってくれるはず。

 

そして2回目、今度は話を理解したいと思って話の筋を追うことを中心に据えながら読んでいきました。そこでやっと話の内容が分かります。

 

面白かったです。2回目も。

ただ、やはりわけもわからず翻弄されまくった1回目の読み方の方が、この小説を思う存分味わえるのかなと思いました。この作品に翻弄される感じ、これこそがその作品を楽しむ醍醐味なのかなと。

 

結構長い話です。長い話が苦手な人は「気狂い地獄」と「胎児の夢」だけでも読んでみてほしい。

 

そしてこの「胎児の夢」小説中ではかなり奇想天外な論文という気がするのですが、実はあながちフィクションではありません。

ここで触れたいのがもう一冊の「胎児の世界」です。女性の小さな臓器、子宮。そこで育つ胎児。ご存知の通り本当にミクロな受精卵から始まりおよそ10ヶ月かけて赤ちゃんまで成長するのですが、その成長の過程を研究していくと意外なことが見えてくる。

実はただ単に成長して人間の形になるのではなく、生物の進化の過程を辿るというのです。しかも過去何十億年という歴史を持つ地球の生物が絶滅しかけた記憶すら再現するという。

小さな胎児のたかだか10ヶ月が生物の進化の歴史ですよ!考えられないくらい壮大なことがちっちゃな臓器で起きている。まさに生命の神秘です。

この過去に地球上の生物が絶滅しかけたピンチの再現、この部分がドグラマグラの「胎児の夢」に繋がってくるのです。

この小説で描かれる胎児の夢は悪夢なんです。

 

是非、「ドグラマグラ」のスチャラカチャカポコな世界に身をひたして翻弄され、「胎児の世界」で生命の神秘に圧倒されてください。